土地や建物などの不動産は、一般的に多くの方が所有しており、相続財産に含まれる機会の多い資産の1つです。

総務省統計局の集計結果によると、2018年時点で住宅総数の61.2%が賃貸ではなくマンションや一戸建てなどの自宅を所有しており、更に自宅以外に土地を所有している世帯が13.1%にも及んでいる状態です。

自宅以外に土地を所有している方の半数以上、60.8%もの方の土地の取得方法は、相続や贈与によるものだということが分かっています。

では、いざ土地や建物などの不動産を相続した場合、どのような順序でどういった手続きを行う必要があるのかご存じでしょうか?

この記事では、不動産相続が発生した場合の流れや必要な手続き、注意点について詳しく説明します。

(参考:総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果「住宅及び世帯に関する基本集計」
(参考:総務省統計局 平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果「土地集計」

相続発生から相続登記(不動産の名義変更)までの流れ

相続発生から相続登記まで

相続が発生したからと言って、すぐに不動産の名義変更である相続登記をできるというわけではありません。後にトラブルに発展してしまわぬよう、相続登記をするためにもきちんと確認や話し合いを行う必要があります。

①遺言書の有無を確認

相続が発生したら、まずは被相続人が遺言書を作成していないか確認をしましょう。遺言書が作成されている場合、不動産などの遺産の分割方法や相続人が指定されている可能性もあります。

また、公正証書遺言や自筆証書遺言など、遺言書にはいくつかの種類が存在します。被相続人の残した遺言書が公正証書遺言、もしくは法務局で保管された自筆証書遺言以外の場合は、家庭裁判所での検認が必要となるため、勝手に開封してしまわぬよう注意が必要です。

→詳しくはこちら「遺言書

②相続人の調査・確定

遺言書の有無を確認したら、次は相続人の調査と確定をしなくてはなりません。誰が法定相続人なのか、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めて調べる必要があります。

結婚などで本籍地が変わっている場合は、過去の本籍地を探してそれぞれの市区町村で戸籍謄本を取得しなくてはならないため、決して容易ではありません。

相続人が1人でも欠けた状態での遺産分割は無効になってしまいますので、漏れが発生することのないように調査しなくてはなりません。

また、法定相続人でなくとも、遺言書で受遺者として指定されている人がいる場合にも、注意が必要です。

→詳しくはこちら「法定相続人と相続分

③相続財産の把握

相続人を確定させたら、被相続人の相続財産を調査します。相続財産には、預金や不動産などのプラスの遺産だけではなく、キャッシングなどの借金も、マイナスの遺産として含まれるため注意が必要です。

相続財産の調査も相続人の調査同様、どこか1か所で全てが分かるというわけではありません。不動産なら所在地の法務局、口座をどこに所有しているのかは、各銀行ごとに確認をしなくてはなりません。

また、キャッシングなどの借金は、信用情報機関に情報開示請求をするなどして、調べる必要があります。調査の結果、プラスの遺産よりも、借金などのマイナスの遺産が多い場合などは、相続放棄や限定承認を検討する必要がでてきます。

相続人の調査同様、相続財産の調査も個人で行うのは容易ではないうえに、相続放棄や限定承認は、原則として相続の発生を知った日から3か月以内に申立てを行わなくてはなりません。

相続をするのか、それとも相続放棄をするのかを決めるためにも、相続財産の調査はとても重要な部分になります。個人での調査が困難な場合は、早い段階で司法書士等の専門家に調査を依頼することをおすすめします。

④遺産分割協議・協議書の作成

相続人や相続財産の調査が完了したら、調査結果をもとに誰がどの財産をどれぐらい相続するのかを決めていきます。

遺言書があり、その内容に沿って遺産分割を行う場合は、基本的に遺産分割協議の必要はありません。しかし、遺言書に記載されていない財産があったり、自筆証書遺言の場合は不備があることも多いため、そのような場合には遺産分割協議が必要になります。

遺産分割協議は共同相続人が1人でも欠けていれば無効になってしまうため、相続放棄をしていない法定相続人と受遺者の全員で遺産分割協議を行わなくてはなりません。この遺産分割協議の中で、相続する不動産の分割方法や、評価の方法も決めることになります。

全員が合意した協議の結果を遺産分割協議書にすることで、相続財産の名義変更などの手続きが可能になり、更に協議後のトラブルを未然に防ぐこともできるのです。

→詳しくはこちら「遺産分割協議とは?なぜ必要なのか?

⑤相続登記(不動産の名義変更)

共同相続人全員が合意して遺産分割協議書の作成が完了すると、ようやく不動産の名義変更である相続登記が出来るようになります。

相続登記は遺産分割協議書を持って法務局へ行き、自分たちで手続きを行うことも出来ますが、30,000円前後で司法書士等へ依頼することも可能です。平日なかなか時間を作れない場合などは、司法書士等の専門家に代行してもらうことをおすすめします。

相続登記が完了して不動産の名義が相続人に変わると、相続した不動産の売却などが出来るようになるのです。

→詳しくはこちら「相続登記はいつするのか

なぜ相続登記が必要なのか

不動産を相続したからといって、相続登記をしなければならないという義務はありません。そのため、売却をする予定が無い場合など、相続登記をせずに長期間放置をしてしまう方も少なくはありません。

しかし、相続登記を先延ばしにすることで、下記のような様々なリスクが発生してしまいます。

・不動産の売却が出来ない
・共同相続人の債務等が原因で、相続した不動産が差し押さえされてしまう
・共同相続人が自身の持分を売却してしまい、他人との共有財産になってしまう
・相続した不動産を担保に融資が受けられない
・相続人が高齢化することで、年々遺産分割が難しくなる
・数次相続が発生し、状況が煩雑化してしまう

現在では相続登記に法的な期限はありませんが、相続した不動産を活用したり売却したりするためには必要な手続きです。上記のようなトラブルに発展してしまうことを未然に防ぐためにも、不動産を相続したら早めの相続登記をおすすめします。

また、相続登記がされないまま所有者不明の空き家が年々増え続けており、社会問題にまでなっています。そのため、2020年以降に相続登記の義務化が検討されているのです。

相続登記は自分でも行うことができる手続きではありますが、長年相続登記をされていない不動産は、数次相続が発生していたりと煩雑化している可能性が高くなります。そのため、相続登記が義務化されれば、今まで相続登記をしていなかった人達が、一斉に司法書士等の専門家に依頼をすることが想定されます。

自身で相続登記が困難な方、相続登記を行っていない不動産を所有している方は、義務化される前に司法書士等の専門家にご相談ください。

(参考:法務省 法制審議会第183回会議(平成31年2月14日開催)「 配布資料5 民法及び不動産登記法の改正について」

相続した不動産の分割方法

預金などとは異なり、均等に分割することが難しい不動産には、代表的な4つの分割方法があります。

現物分割

不動産などの財産を、そのままの状態で相続

換価分割

不動産などの財産の一部、もしくは全てを売却し、現金化して分割

代償分割

不動産などの財産の一部、もしくは全てを相続人の1人が相続し、他の相続人に代償金を支払う

共有分割

不動産などの財産を、相続人の共有名義にして相続

どの分割方法にもそれぞれメリットやデメリットがあり、相続人によって希望する分割方法が異なることも少なくありません。更に、相続する不動産の評価方法も相続人間で遺産分割協議をして決めなくてはならないため、土地や建物などの不動産は、相続財産の中でもトラブルに発展しやすい財産といえます。

→詳しくはこちら「【不動産と相続】もめるケースとは?土地・建物の遺産分割方法
→詳しくはこちら「【不動産と相続】遺産分割での土地・建物の評価方法

不動産の相続と相続税の基礎控除

土地や建物などの不動産は、相続財産の中でも比較的高額になりやすい財産です。そのため、不動産を相続する方の多くが相続税の心配をされます。

しかし、相続税は不動産などの1つ1つの財産に対して課税されるものではなく、被相続人の遺産総額に対して発生します。

また、相続税には基礎控除があり、遺産総額が基礎控除額を下回り、相続税自体が発生しないという方がほとんどです。

相続税の基礎控除額
3,000万+600万×法定相続人の数

基礎控除額

→詳しくはこちら「相続税(平成27年改正)

土地の相続税を大幅に減額する方法

預金や不動産などの遺産の総額が基礎控除額を上回ると、相続税が発生します。基礎控除額を上回ってしまった場合、遺産に土地があるのであれば、小規模宅地等の特例が利用できないか税理士に相談してみましょう。

小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たせば相続した土地の相続税評価額を最大で80%減額できるという特例です。

この特例の対象となる土地は3種類あり、それぞれ限度面積と減額率が異なります。

対象となる土地の種類

特定居住用宅地等 居住用に使われていた土地
特定事業用宅地等 事業用に使われていた土地
貸付事業用宅地等 不動産の貸付事業用に使われていた土地

 
限度面積と減額率

土地の種類 限度面積 減額率
居住用 330㎡ 80%
事業用 400㎡ 80%
貸付事業用 200㎡ 50%

また、遺産分割協議では土地や建物などの不動産の評価方法も相続人間で自由に決めることが出来ますが、相続税評価額はきちんと決まった評価方法が存在します。

小規模宅地等の特例には細かい適用要件があるので、相続した土地に特例は適用可能なのか、相続税評価額がいくらになるのか知りたい方は、税理士等の専門家への相談をおすすめします。

相続した不動産に住宅ローンなどが残っている場合

住宅ローンや不動産担保ローンが残った状態の不動産を相続することになった場合、ローンの返済は誰が負担するのかというのが気になる点だと思います。住宅ローンの場合、団体信用生命保険に加入していれば、相続発生後は保険で住宅ローンが完済されるため心配はありません。

しかし、団体信用生命保険に未加入の住宅ローンや不動産担保ローンが残っている場合、残っているローンもマイナスの財産となり相続の対象となります。

ローンなどのマイナスの財産も、法定相続分に応じて相続が発生します。もちろん遺産分割協議でローンの相続分を決めることは可能ですが、借入先である銀行などの債権者には遺産分割協議の内容に応じる義務はありません。

残ったローンを法定相続分とは異なる割合で相続をしたいのであれば、各債権者所定の審査を受け、債権者が承諾をすれば法定相続分とは異なる割合でローンを相続することが出来るのです。

→詳しくはこちら「連帯保証人の相続について

残された配偶者を守る、配偶者居住権

約40年ぶりに相続法が改正され、2020年4月から配偶者居住権という権利が発生するようになりました。

この配偶者居住権は、自宅の所有権を持った配偶者が亡くなっても、残された配偶者がそのまま自宅に住み続けられるという権利です。

今までの相続法では、残された配偶者が自宅を相続しても、生活費の確保や代償分割のために結局は自宅を売却せざるをえなくなってしまうなどというケースも少なくありませんでした。

そのため、自宅である不動産の所有権とは別に、住む権利(使用権)である配偶者居住権が新たに施行されたのです。

配偶者居住権

相続した不動産はどうするべき?誰に相談すればいい?

戸建てやマンション、農地や貸付用不動産など、相続する不動産の種類は様々です。更に相続した不動産を活用するのか売却するのかなども、相続人の状況によってベストな方法やタイミングが異なります。

上記でも解説したように、不動産の相続は決して容易ではありません。そのため、状況や依頼内容に応じて相談する専門家が異なり、ご相談内容によっては、複数の専門家への相談も必要になります。

 

遺産分割協議書の作成等のご相談 行政書士
相続登記や抵当権抹消等のご相談 司法書士
相続税の控除や特例等のご相談 税理士
不動産の相続で揉めている等のご相談 弁護士
売却や土地活用等のご相談 不動産業者

不動産と相続の相談センターでは、全てのご相談を一括でお受けできる体制を整えています。自分がどの専門家に相談すべきか分からない方、複数の専門家にそれぞれ相談をする時間がなくお困りの方も、お気軽にご相談ください。

相談無料
内容がまとまっていなくても大丈夫!

お急ぎの方はお電話でご相談ください

お急ぎの方はお電話でご相談ください

  • 遺産分割について親族間でもめている
  • 遺言書作成を自分で行うのが不安
  • 家族や自分が認知症になったので後見人をつけたい
  • 故人に借金や遺産があるが何からしたらいいか…

など

相続のご相談はこちら

  • 相続した土地をどうしたらいいかわからない
  • 相続した不動産を売却したい
  • 土地などの不動産を自分の子供に贈与したい
  • 不動産を活用して節税対策をしたい

など

不動産のご相談はこちら

※注意※
記事の執筆後に法令改正等が行われている場合、内容が古い可能性があります。法的手続きをご検討中の方は、弁護士・税理士・司法書士等の専門家への確認・相談をおすすめします。