現在、高齢者の4人に1人が認知症やその予備軍と言われ、2015年に厚生労働省が発表した推計結果によると、2025年には5人に1人が認知症患者になると言われています。テレビ番組などでも成年後見人という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか?

(参考:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(新オレンジプラン)」資料1、概要https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000072246.html

成年後見制度は、認知症などで判断能力が不十分になった方の権利や財産を保護するための制度です。今回は、実際に後見人が行う業務の範囲や、どのようにして選任されるのか、また、成年後見制度の必要性について説明します。

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成年後見人が必要な人と類型

成年後見人は、障害や認知症で判断能力が低下した方の権利や財産を保護するために選任されます。成年後見人に保護される方のことを、成年被後見人と言います。

認知症などで判断能力が不十分な状態では、相続の遺産分割協議や、契約行為等ができなくなってしまいます。後見人を選任することにより、被後見人に代わって契約行為等を行うことが出来るようになります。

成年後見制度は大きく2つの分類に分けられます。
成年後見人が必要な人と類型

任意後見制度

任意後見制度は、判断能力が十分にある方が、自身の判断能力が低下してしまった時に備えて、事前に任意後見人を自ら選んで、任意後見契約を結ぶ制度です。

法定後見制度のように後見人が包括的に権利を得るものではなく、具体的に誰に何を支援してもらうのかを決め、公証役場で契約を結びます。

法定後見制度

法定後見制度は、既に判断能力が低下して、自身で財産管理等を十分に行うことが出来ない方に後見人を選任する制度です。判断能力が不十分な本人に代わって、配偶者や子供が家庭裁判所に選任の申立てを行います。

法定後見制度では、選任の申立てを受けた家庭裁判所が被後見人の判断能力に応じて、成年後見人、保佐人、補助人の3つの類型から適切なものを選択することになります。

法定後見制度
 

成年後見人を選任するメリット・デメリット

ご説明した通り、判断能力が不十分な方の財産を保護するためにも、後見人は必要な存在です。後見人を選任することによるメリットは多く存在しますが、勿論デメリットがゼロというわけではありません。

具体的に、以下のようなメリット、デメリットが考えられます。

成年後見制度を利用するメリット

・被後見人に代わり、老人ホームへの入退所の契約が行える
・被後見人が締結した、悪徳商法などの不利な契約の取消しができる
・不動産の売却など、財産処分ができる
・後見人が財産管理をするため、他の親族などの使い込みを防止できる
・相続の遺産分割協議に代理で参加できる

成年後見制度を利用するデメリット

・選任の申立ての費用や、後見人への報酬が発生する
・相続税対策など資産運用が難しくなる
・一度選任された後見人は、原則として被後見人が亡くなるまで変更や解任はできない
・親族であっても自由に財産処分ができない
・個人の一存で後見人を選べない

後見人は被後見人の代理人として、契約を交わしたり、遺産分割協議に参加したりすることが出来るため、このような手続きを控えている場合は必要不可欠です。

しかし、後見人は被後見人の財産の保護のために選任されるので、家族であっても被後見人の財産を自由に処分できなくなってしまいます。

また、生前贈与なども被後見人の財産保護のためではなく、推定相続人のためとみなされるため、基本的には困難になってしまうのです。

一度選任された後見人は、原則として被後見人が亡くなるまで変更や解任が出来ないため、申立ての際は慎重に考えなければいけません。

 

成年後見人の選び方

法定後見制度を利用したい場合、家庭裁判所に後見人の選任の申立てを行う必要があります。被後見人となる本人と配偶者、四親等内の親族や検察官が申立人になることが出来ます。

その際に、後見人候補者を記載することもできますが、必ず候補者が後見人になれるというわけではありません。後見人になること自体に特別な資格などは必要ありませんが、申立て後に家庭裁判所が調査を行い、成年後見の審判を行います。

基本的には、申立ての際に記載した後見人候補者が選任されますが、家庭裁判所の判断で弁護士等の専門家が選任されることもあります。申立て書類の作成や必要書類の収集など、決して簡単と言える手続きではないので、弁護士等の専門家へ相談されることをおすすめします

成年後見人の選び方

 

成年後見監督人とは

後見人の選任をする際、家庭裁判所の判断で後見監督人が選任されることもあります。後見監督人とは、名前の通り後見人を監督する人物です。

家庭裁判所によって選任された後見人だからと言って、財産の使い込みなどの不正を100%行わないとは言い切れません。そのため、選任された後見人がきちんと後見業務を行っているかを確認する目的で、後見監督人が選任されるのです。

任意後見制度を利用する場合は、後見が開始する際に家庭裁判所によって任意後見監督人が必ず選任されます。

包括的で大きな権限が与えられる法定後見制度を利用する場合、基本的には家庭裁判所が後見人の監督を行います。そのため、必ず後見監督人が選任されるわけではありませんが、家庭裁判所が必要だと判断した場合には、後見監督人が選任されます。

 

成年後見人の業務

成年後見人の業務は、財産管理と身上監護の2つに分けられます。

預貯金や不動産などの維持や処分といった、被後見人の財産の管理を行うのが財産管理、医療や介護に関する契約など、被後見人が適切な生活を送れるよう手続きを行うのが身上監護です。

財産管理 身上監護
現金や預貯金などの管理 医療に関する手続き
不動産の管理や処分 介護に関する手続き
収支の管理 家賃の支払いなど住居に関する手続き
株式や有価証券などの金融商品の管理 施設への入退所の手続きと監視
確定申告や納税などの税務管理 など 療養介護に関する手続き など

 

後見業務に含まれないこと

後見業務の1つに身上監護が含まれていますが、後見人の行う身上監護は法律行為であり、食事や排せつなど被後見人の介護や身の回りの世話を行うのは、後見人の業務ではありません

他にも当センターにご相談いただく方の多くが、下記などを後見業務だと誤解しているケースが多くあります。

後見業務に含まれないもの

・介護や身の回りの世話
・死亡届やお葬式などの死後の手続き
・施設入所の保証や身元引受
・医療に関する同意
など

後見人が行うのは、あくまでも財産管理や身上監護の法律行為で、被後見人が亡くなると後見業務は終了します。被後見人の介護や身の回りの世話に関しては、親族で行ったり、施設などを利用することになります。

 

成年後見は判断能力が低下した方を守る為の制度

成年後見人は、被後見人の財産管理を行うためだけでなく、被後見人の権利を守り、生活を維持していくためにも必要な存在です

親族による財産の使い込みや、悪徳商法などによる不利な契約の締結などのトラブルを回避するためにも有効です。

成年後見制度の申立てには様々な書類が必要となり、時間も要してしまうため、ご不安な方は早めに弁護士等の専門家へご相談ください。

 

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※注意※
記事の執筆後に法令改正等が行われている場合、内容が古い可能性があります。法的手続きをご検討中の方は、弁護士・税理士・司法書士等の専門家への確認・相談をおすすめします。